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NI LabVIEWとNI PXIを使用してレゾルバの動作を模擬、マイコンのシステム評価に大きく貢献

 

アプリケーションごとに異なるプログラムによって稼働するマイコンについては、実際に使用される条件での動作を十分に評価/検証する必要がある。その際、問題になるのが、システムの挙動を安定的かつ再現性良く評価するために、マイコンに信号を入出力する周辺部品も含めた環境を用意しなければならないということだ。そうした周辺部品の1つに、レゾルバセンサーがある。富士通マイクロソリューションズでは、NIのLabVIEWとPXIを活用することにより、このレゾルバの動作を模擬する信号生成用治具を開発した。この治具によって、従来の手法とは異なるどのような効果が得られるのか、さらにはLabVIEWとPXIを活用することで、マイコンのシステム評価にどのような変革がもたらされるのか、同社MS開発本部 ソリューション開発統括部 マイコンシステム開発部 の越川丈太郎氏と土屋耕一氏にお話を伺った。

 

マイコンでは、システムレベルの評価が重要

 

富士通マイクロソリューションズ(以下、FMSL)は、最先端の半導体技術をベースとした大規模システムLSIの開発、ならびにそうしたLSIを活用したシステム開発を行う企業である。ハードウェアとソフトウェア両方の設計/開発部門を有しており、それらの連携/融合によるトータルソリューションを提供している。具体的な事業の例としては、富士通セミコンダクターが販売するマイコンの設計/開発、マイコンに搭載するソフトウェアの開発、システムソリューションの開発を担っている。そして、これらの開発事業において大きな比重を占めていることの1つが、マイコンの評価だ。すなわち、マイコンのハードウェアと、それに搭載するソフトウェアを組み合わせて動作させた結果、何も問題が発生しないことを検証するのが、FMSLの重要な役割の1つである。

そうした検証においては、実際のシステムで利用される構成要素(マイコンの周辺部品)の動作も含め、システムレベルでの評価を行わなければならない。例えば、富士通セミコンダクターの場合、レゾルバセンサー専用のインタフェース回路を搭載した32ビットマイコン「MB91580シリーズ」を製品化している。ここで言うレゾルバセンサーとは、EV/HVの三相モータ制御に使用する角度センサーのことだ。レゾルバは、図1に示すように、励磁コイルと、互いに直交する2つの検出コイル、ロータで構成される。励磁コイルに振幅/周波数が一定の正弦波信号が入力されると、検出コイルからは変圧器に似た仕組みで信号が出力される。このとき、ロータの角度に比例して検出コイルから出力される電圧が変化するので、その電圧量を検出すれば角度がわかるという仕組みである。このようにして構成したレゾルバでは、0.1度以下の高い検出精度を得ることができる。一方のマイコン側は、レゾルバ用のインタフェース回路として、検出コイルからの信号を受け取り、角度情報をデジタルデータとして得るための角度検出器(RDC)を備えている(図2)。このようなマイコンの評価を行うには、当然のことながら、レゾルバから出力されるのと同等の信号を用意しなければならない。しかも、システム評価では、角度検出器の動作のみならず、それ以外の回路ブロックがそのときどのような挙動を示すのかということも評価する必要がある。

FMSL MS開発本部 ソリューション開発統括部 マイコンシステム開発部 部長 越川丈太郎氏

富士通マイクロソリューションズ株式会社 MS開発本部 
ソリューション開発統括部
マイコンシステム開発部
部長 越川 丈太郎氏

FMSLMS開発本部 ソリューション開発統括部 マイコンシステム開発部 土屋耕一氏

富士通マイクロソリューションズ株式会社 MS開発本部 
ソリューション開発統括部
マイコンシステム開発部
土屋 耕一氏

図1. レゾルバの構造と入出力信号

図2. レゾルバと角度検出器の関係

 

レゾルバの実機でも評価には不十分

 

上述したような評価を行いたい場合、従来は検出コイルからの出力波形を得るために、実際にモータを使ってレゾルバのロータを回転させ、検出コイルからの実際の出力波形を得るという手法を用いていた(図3)。しかしながら、この方法にはいくつかの問題があった。FMSLで MS開発本部 ソリューション開発統括部 マイコンシステム開発部 の部長を務める越川丈太郎氏は、「そもそもこの方法では、評価のために、一定の回転数を得て一定の状態を作るということが難しかった。そのため、再現性良く、定量的な評価結果を得ることができなかった。このことが大きな課題となっていた」と語る(写真1)。これは、通常動作時の評価でも生じる課題である。しかし、システムレベルの評価は、通常動作時の検証だけを行えばよいというものではない。例えば、レゾルバが故障したときや、何らかの要因によってレゾルバが通常ではありえないような動作をしたとき、システムには一体、何が起きるのか。「実際のレゾルバは機械系のシステムなので、例えば高速回転の状態から瞬間的に停止の状態に移行する(急激に角度が変化する)といったことは起きないであろう。しかし、万が一そういう状態になった場合に、マイコン単体、ならびに角度検出を利用するシステム全体がどのような挙動を示すのかは検証によって把握しておく必要がある。マイコンが異常波形を受けとったときの挙動について、シミュレーションでは、ある過渡的な状態までしか見ることができなかった。また、実機のレゾルバを使う方法でも、現実的には検証が行えなかった」(越川氏)という。

図3. 従来の出力波形の生成方法

 

なお、ファンクションジェネレータを使って、レゾルバの検出コイルからの信号を模した波形をマイコンに与えることにより、通常動作、異常動作に対応した評価を行うという手法も考えられる。しかし、「その方法では、システムにおけるレゾルバの部分をそっくりそのまま置き換えることができない。レゾルバは自身で能動的に波形を生成するものではなく、励磁コイルの波形を受け取り、それを基にして検出コイルの波形を受動的に生成するものだ。それに対し、ファンクションジェネレータは自身が能動的に波形を生成する。これをレゾルバを置き換えるものとして配置すると、レゾルバの部分で系が分断されることになり、システムレベルの評価としてふさわしいものだとは言えない」(越川氏)という。

システム評価を適切に行うには、レゾルバの通常動作/異常動作を模することが可能で、しかも実際のレゾルバをそのまま置き換えられるものを用意する必要があったのだ。

LabVIEW と PXIで”実機を凌ぐ”評価治具を実現

 

そこでFMSLでは、ナショナルインスツルメンツ(NI)のハードウェア/ソフトウェア製品を活用することで、実際のレゾルバをそのまま置き換えることが可能な信号発生用治具を開発することを考えた。システム構成としては、図4に示すように、A-Dコンバータ(ADC)、D-Aコンバータ(DAC)、デジタル演算部によってレゾルバの各構成要素を置き換えることにした。そのためのハードウェアとしては、NIのRシリーズマルチファンクションRIO「PXI-7854R」を採用した。ADCとDACについては、同製品が搭載する分解能が16ビットでサンプリングレートが750kHzのADCと、分解能が16ビットでサンプリングレートが1MHzのDACをそれぞれ使用した。そして、デジタル演算ブロックは同製品が搭載するFPGA(Xilinx社の「Virtex-5」)によって実装することにした。FPGAのプログラミングには、グラフィカルシステム開発プラットフォームである「LabVIEW」と「LabVIEW FPGAモジュール」を使用する。

図4. 信号発生用治具の構成

この構成を採用したことのメリットとして、越川氏は大きく2つのポイントを強調する。1つは、FPGAが備える高い処理性能である。「レゾルバの動作を模擬するデジタル演算は、PC上のソフトウェア処理で行うよりも、FPGAによるハードウェア処理で行うほうが高速化が図れた」(同氏)という。もう1つは、LabVIEWによるFPGAプログラミングの容易さだ。LabVIEWとLabVIEW FPGAモジュールを利用することにより、「FPGAを利用した経験のない人でも、FPGAのプログラミングを行っていることを意識することなく、グラフィカルな操作だけで容易にプログラミングが行える」(同氏)からだ。

このような構成により、レゾルバの動作を模擬する信号発生用治具を作り上げることができた(写真2)。検出コイルの出力波形は、LabVIEWで作成したGUI画面にいくつかのパラメータを設定するだけで生成できる。しかも、実機では精度が劣化する極低速の信号や超高速の信号まで自由自在に生成することが可能である(図5)。また、起動や停止などの状態設定についても自在に操ることができる。さらには、レゾルバのショート、断線などに対応する振幅異常や、速度の急変、飛びなどに対応する角度異常なども、GUI画面におけるパラメータの設定によって、自在かつ非常に高い再現性で模擬できるようになった(図6)。

写真2. 信号発生用治具の外観

図5. 生成した波形の例

図6. 角度が急変した場合の波形の例

このように、FPGAを搭載するPXI製品とLabVIEWを利用することで、従来は、実機を使用するしかないと考えられていたレゾルバの動作を模擬することが可能になった。しかも、従来のシステム評価環境におけるレゾルバをそっくりそのまま置き換えることが可能である。加えて、従来は得られなかった安定性や再現性も実現されている。さらに、実物のレゾルバでは作り出すことが難しかった異常な動作をも模擬し、その状態におけるシステムの挙動を評価することが可能になったのである。

この信号発生用治具は、すでにFMSL社内で異常状態の評価に活用されている。また、今後はレゾルバを使っている顧客に対して紹介することも想定しているという。その際には、NIのPXI製品のCOTS(商用オフザシェルフ)品として特徴が活きてくる。すなわち、ソフトウェアの移植を行うだけで2台目以降の製作が可能なのだ。しかも、その際にはNIの「非常に手厚いサポート」(越川氏)を受けることができる。

 

マイコン評価用の標準プラットフォームとしての可能性 

 

実は、FMSLがNI製品を採用するのはこれが初めてのことではない。従来、マイコンの評価では、手作業が占める割合が非常に大きく効率が悪かった。同社 マイコンシステム開発部の土屋耕一氏は、「従来は、各種の汎用計測器を用意し、それらをGPIBでつないで、テキストベースの言語で記述したプログラムをPC上で実行することによって制御/計測を行うという手法で評価を行っていた。この方法だと、実際の評価作業よりも準備作業に多くの時間を割かなければならないことになる」と指摘する(写真3)。そこで、数年前からNI製品を導入することにより作業効率の向上を図っている。使用しているのは、LabVIEW、PXIベースのマトリクススイッチ、データ集録用ハードウェア「NI DAQ」などである。土屋氏によれば、「定量的な評価を行ったわけではないが、従来に比べて10~20%程度の工数削減が実現できているはずだ」という。

また、同社がNI製品を導入したのは、作業効率の向上だけを目的としてのことではない。今回は、レゾルバ用のインタフェースを対象としたわけだが、マイコンにはほかにもADC/DACやシリアル通信ユニットといったペリフェラルが数多く存在する。それらが動作している際、ほかのブロックがどのような状態になっているのかを同時に検証することがシステム評価の目的の1つである。「マイコンのシステム評価において、複数のブロックの機能を同時に検証できるように、汎用性/拡張性を備えるLabVIEWとPXIをプラットフォームとして活用していきたいと考えている」(土屋氏)という。その効果、可能性について、土屋氏は次のように語った。

「従来の評価手法では、工数の問題だけでなく、各社の測定器の違いなどによって評価の再現性が低下するといった問題も起きていた。LabVIEWとPXIを標準的なプラットフォームとして使用すると決めれば、常に同等の条件下での評価が可能になり、品質の均一性が保たれると考えている。また、制御用のプログラムについても、テキストベースの言語で記述するよりもLabVIEWによるグラフィカル記述のほうが容易だし、コーディングにおける個々人の癖や好みが現れにくく、他者にとっても可読性の高いプログラムが出来上がる。LabVIEWとPXIを標準的なプラットフォームとして使用すれば、評価にかかる工数を現状の1/3くらいまで減らせるのではないか」。

 本事例の詳細:NI LabVIEWとNI PXIを使用してレゾルバの動作を模擬、マイコンのシステム評価に大きく貢献

 

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